uporeke's diary

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J・P・ホーガン『星を継ぐもの』(創元SF文庫)

名作とうたわれるとかえって手を出したくなくなる天の邪鬼だが、プリースト『逆転世界』並の驚きがあると聞いては放り出しておくわけにはいかない。

月面で宇宙服に包まれて見つかった遺体は5万年以上前のものだった。過去の地球には月面に到達できるだけの文明があったのか、それとも地球外生命体なのか。研究者たちが導いた答えは意外なものだった。

プロジェクトXが好きな人ならまちがいなくはまる。地道な理論を重ねていってたどり着く先は、読了以前には想像もつかない結論。日本人だと状況証拠ばかりを重ねてしまいがちだが、アメリカを舞台にしているので神の存在が取りざたされるのも心地よい違和感があり、正しいSFを読んでいるという逆説的な安心感につながる。また、いわゆる「ほうれんそう」がしっかりしていないのは洋の東西を問わないわけで、解析班の中でも既知の事項と未知の事項が入り交じって、偶然の結果新しい発見があったりするところは実に共感でき、登場人物と同じ興奮を感じられる。さすがの傑作。