uporeke's diary

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風邪のひきかた

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辻征夫の詩集に『かぜのひきかた』がある。わたしが人生で初めて買った詩集だ。

 

かぜのひきかた

かぜのひきかた

 

 この本を読んで初めて詩が身体に入ってきたと感じた。それまでラブクラフトやら寺山修司やら詩ではないものの、詩の形が強く活かされている本を読んできたにも関わらず、詩がよくわからなかった。いま思えば、それは詩が持つイメージを共有できていなかったのだ。

 

言葉には定義があり、詩のように短い文章では言葉ひとつひとつの定義がより濃く著されるし、歴史的な背景も含めて託された意味をすべて読み取らなければならない。それまで宮沢賢治ランボーをかっこつけて読もうとしたもののすべて討ち死にしていたのは、当時のわたしの語彙では言葉が持つ定義をすくい取ることができなかったせいなのかも、と思う。すごくせっかちで、次から次へと本を読みあさっていたけれども、読み取るだけの能力を身につけるのはもうちょっと後だった。

 

風邪をひくたびにいつもこの詩集を思い出すけれども、でも、開かない。風邪のひきかたはもう知っているから。