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uporeke's diary

苔を見ています http://www.uporeke.com/book/

リニアモーターカーはわたしたちの税金を蝕むことまちがいなし 『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』を読んだ

 

リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」 (集英社新書)

リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」 (集英社新書)

 

 

子どものころ、リニアモーターカーは夢の乗り物でした。新幹線より静かで早くて安全。そう教わってから大人になって忘れた頃にリニアモーターカーが復活するという話になったのが2007年。税金は投入せずJR東海単独で作るということで民主党政権時代に認可が下りたにも関わらず、結局は政府の財政投融資を利用することになりました(「リニアのJR負担、5千億円減 国交省試算、財投活用で」)。2017年1月現在、すでにトンネルを掘り始めています(「県道の四徳渡トンネルで掘削作業開始」)。個人的には大規模な自然破壊につながるリニアモーターカー建設には反対です。しかし、単に自然破壊だけが問題なのでしょうか? これから賛成派・反対派両方の本を数冊通して読むことで、リニアモーターカーが環境・経済・安全などの面でどんな問題を抱えているのか調べていこうと思います。そもそも、JR東海のサイト自体にリニアモーターカー建設について説明する気持ちが少しも感じられず、何か後ろめたいことがあるのかと勘ぐってしまいます。

1冊目は橋山禮治郎『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』で、この方はリニアモーターカー建築反対派。新幹線でいいじゃないか、というスタンスです。著者は「経済性」「電力消費量」「安全性」の面からリニアモーターカープロジェクトが失敗につながると論じています。数字に裏打ちされた論考で、過去にはドイツも検討した末にやめていると聞くと、早さだけのために9兆円もの巨大プロジェクトを推進するというのは子供じみた世迷い言に思えてしまいます。

「採算がとれない」

JR東海の山田佳臣社長(当時)が「リニアは絶対にペイしない」と断言してしまうくらいに採算の見通しがたっていないらしい。プロジェクトにかかる費用もさることながら、リニアモーターカーという新しい規格は他の路線に転用できない、転用するにはJR東海くらいに余裕がないと難しいわけです。

もちろん人口減の問題もあります。大阪まで開通する2045年くらいには日本の人口が1億人以下になると言われています。単純に国内利用者数が減ると予想されているのに、JR東海や他の自治体は利用者数が増えると仮定して見積もっている。東海道新幹線の利用者がリニアモーターカーに移行するというのが理由らしいですが、だとしたら東海道新幹線の採算はどうなるのか。

本書では川崎と木更津の間を通っているアクアラインが計画の38%しか利用されておらず、1日あたり1億円を超える赤字を出しているそうです(!?)。しかも民間会社が主導で建築したにも関わらず、開通直前になって責任を放棄したことで国が肩代わりしているとか。リニアモーターカーも同じ轍を踏まないようにしてほしいものです。

「電力がすごい」

別に原発を必ずしも建造する必要はないと思うのですが、それでもリニアモーターカーを動かすには原子力発電所3~5基程度の電力が追加で必要になると言われています。東日本大震災でさんざん節電が必要と言われてからたった数年しかたっていないのに……。日本の電力が余っているとでもいうのでしょうか? これについてはJR東海が明確な数字を出していないので、本当にそれだけの電力が必要になるのかはわかりませんが、少なくとも新幹線の3〜5倍の電力を使うことはまちがいなさそうです。

「安全が確保されていない」

本書では電磁波が身体に与える影響について強く懸念されています。個人的には総務省が発表している電波の人体に対する影響に書かれている「熱作用」「刺激作用」以外に証明されていない健康被害について、わたしは不安に感じていません。リニアモーターカーの実験線に乗って体調を崩した人いませんよね? いわゆる左といわれる某党にも言えることですが、科学的な論拠が曖昧なところを攻めるのは得策ではないと思います。

ただ、地震などによるトラブルの際にどのように安全を確保するかということはとても気になります。ほとんどの路線がトンネルになりますが、5~10kmの間隔で地上へ出られる階段がもうけられるそうです。「運転士がいない状態で大きな地震などが起きた場合、操作はどうなるのか?」「トンネル内で立ち往生した場合、どうやって脱出するのか?」などについて懸念事項としてあげられています。トンネルから地上へ出られたとして、山梨や長野の山中に放り出されることになり、乗客はそこからどのように救出されるのかも気になるところです。夏ならまだしも、氷点下の冬に救助が来るまでずっと地上で凍えていなければならないとしたら、事故で死ななくても遭難の憂き目に遭うわけです。

本書では触れられていませんでしたが、2045年に大阪へ開通するまで名古屋より遠くに行く人は新幹線に乗り換えが必要になります。40分で名古屋に行けたとしても新たに新幹線に乗り換えなければならず、2つのきっぷを予約しなければならないなら、東京や品川から新幹線「のぞみ」に乗り続ける方がトータルでは早いかもしれません。ちょっとめんどくさい。

調べれば調べるほど赤字や危険しか予感できないリニアモーターカー。今のところ賛成派からは(根拠の薄い)地域振興くらいしかメリットを感じられないので、早く納得できる意見をききたいものです。