uporeke's diary

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追い求める男

今週はレコードを50枚ほど処分することにしました。自分で買ったものが思いのほか多く、レコードプレイヤーが壊れてから10年以上聞かずに放っておいたもの。学生時分に東京に出てきた時にはすでにCDが主流でMDプレイヤーが流行りだした頃でしたが、まだわずかばかりレコード屋がありました。住んでいた町にも駅前に小さなレコード屋があり、バイト代が入るとつい透明な扉を開けて30分くらいはレコードやCDを漁ったものです。

 

#143 旗の台「鳥樹」

#143 旗の台「鳥樹」

 

 ※むかし、上記でバイトしてました……。

 

今でいうところの「ぼっち」であったわたしは、Jazzとの出会いも基本的には書籍で紹介されているもの。当時は寺島靖国さんの本をよく読みました。マニアックで偏りのある物言いが今も昔も大好きで、何せ家にオーディオ専用の電柱を立てた先駆者ですから偏り具合は相当なもの。とはいえ歌心のある選曲でしたし、探しても見つからないようなレア盤ばかりでもないので、Modern Jazz QuartetやKenny Dorhamなどを知ることができたのは、今のささやかな趣味につながっています。

 

Quiet Kenny (Reis)

Quiet Kenny (Reis)

 

 

それまでメタル音楽ばかりを聴いて疲れた耳にJazzはたいそう心地よく、この心地よさをもっと求めたいという気持ちが民族音楽アンビエント系、プログレッシブロックにつながったのはさておき。それでもJazzというジャンルを聴くのならば無視できない人がいました。Charlie Parkerです。今とちがって明確なコンセプトにもとづくアルバムがほとんどなく、選集といった感じのアルバムばかりでした。2分程度の曲がほとんどで、すごく吹きまくっているけど、好きかどうかと問われると……誰も問う人がいなくてよかった。当時公開された映画も見ましたが、それで好きにつながるわけでもなく。今でも音楽というよりは、猛々しい一陣の風という印象のままです。

 

ナウズ・ザ・タイム+1

ナウズ・ザ・タイム+1

 

 

Charlie Parkerを聴いてから10年もたたないうちにラテンアメリカ文学にはまり、そのきっかけはコルタサル『悪魔の涎』文庫本でした。ここにはコルタサル畢竟の一作「追い求める男」が収録されています。これも読んだ当初は他の作品とのギャップが大きく、Charlie Parkerが題材と聞いてさもありなんと思ったものです。技巧よりも感情のうねりのようなものが直接ぶつけられるような気がして、読んでいて心地よさがない。それでもなぜか目は文章を追いかけてしまうのです。こういう好きではないのに読まずにいられない、聴かずにいられないものばかりをいつの間にか自分が追い求めるようになっていました。この先もずっと手に入らないもの(おおむね美しいもの)を追いかけるだけの生活なのだろうと思います。

 

悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)

悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)