山椒エール
山椒の味は好きだけど使いどころが難しい調味料、というかハーブ。麻婆豆腐には花椒をがんがん入れていたけど、うなぎに山椒って正直合わないと思っていた。うなぎのまろやかなおいしさを邪魔すると思う。うなぎ食うな。
関係ない話だけど、うなぎは絶滅寸前でワシントン条約で漁獲を規制されるというのに、いまだにグルメな人たちが平気な顔でうなぎを食べているのが理解できない。絶滅の片棒を担いでいて平気なのだろうか? おいしいうなぎだからこそ、数年我慢して絶対数を増やし、制限範囲内で獲れた分をたまにおいしく食べるというのが筋だと思う。だからわたしは絶滅が危惧されている間にうなぎを食べている人には、容赦なく何度でも言います、うなぎ食うな。
あ、山椒エールの話でした。正直、これにどんな料理を合わせればいいのかが分からない。ビールではなくて発泡酒扱いですが、山椒が入ることで妙にとがった味になり、肉などの脂は流し落とさずにキンキンと輝きながら喉を越していき、流れ星のようにすっと消えていく。どのようなシチュエーションで呑めばいいかわからないまま呑みきってしまった。数回呑んでみないと良さがわからないかもしれないので、見かけたらまた挑戦します。
焼鰺
海のある県に生まれたが、海までは遠く、海からトラックが魚を売りに来ていた。よくおつかいで魚を買いに6軒隣の広場まで刺身を買いに行かされたことを覚えている。たいてい色の薄い鮪・真っ白になって固めの烏賊・ハマチの3種。当時、ハマチは養殖で目が4つあるなんて噂されたものだが、わたしはその3種の中ではハマチしか口にしなかった。今でも鮪や烏賊の刺身はよほど状態がいいと思えない限りは自分から選ばない。1000円持たされて家族4人分買えた。
子どもの頃、鰺はあまり食卓にのぼらなかった。たぶんその県の海ではあまり獲れなかったのだろう、今でも実家に帰って鰺が出たことはあまりない。その反動か、青魚や白身魚ばかり好きなおっさんになってしまった。
鰺は刺身でもいいし、焼いてもうまい。ぜいごをとって、塩を振って、グリルに入れておけばメイン料理のできあがりなので、料理の効率もいい。焼き魚と大根おろしと日本酒ぬる燗は夏でも冬でも最高です。
すごい唐辛子に埋まった唐揚げ
労働で忙しかった時などは適当に穴埋めです。
新橋の某おいしい酒屋、なのですが、なぜか唐揚げが大量の唐辛子に埋まってやってきた。げほげほとむせながらいただいた懐かしい思い出。
茄子とししとうの揚げ浸し
ししとうってなんで「獅子唐辛子」なんだろう? 辛さは普通の青唐辛子より弱いのに、何が「獅子」なんだろうか。
実家では母親が働いていたのであまり手の込んだ料理が並ぶことはなかった。たいていスーパーの総菜と、家でとれた野菜を炒めたもの、味噌汁くらい。なかでも揚げ物は火事の恐れもあるからと決してやろうとはしなかった。その考え方をわたしもひきずっていて、家で揚げ物をすることはほとんどない。
しかし好物のししとうを大量にいただいた(ありがとうございます!)となれば、話は別だ。中華鍋にサラダ油と香り付けのごま油をいれたら、それなりの強火で茄子といっしょに素揚げしていく。左のコンロでは出汁つくり。昆布と鰹節からとった出汁に、薄口醤油(野菜には薄口醤油がいい)や白出汁まで入れて濃いめに仕上げる。甘さは揚げ油が引き受けてくれるので控えめにみりんのみ。
野菜が揚がったら一度キッチンペーパーで油を切ってから、出汁のプールに泳がせる。ししとうが揚がって白く変色したり焦げ目がついているのを見るとしあわせだ。塩をふって食べるだけでも絶対うまい。揚げ浸しはカレーと一緒で味がなじむ明日の方がうまいが、夏の料理はめんどくさいこといいっこなし。ビールと一緒に流し込めばいいのです。
トマトとバジルのサラダ
手づくりの木製の家具などはいつも清潔だし、時代物の衣装箱はむせるようなバジルの香りを放っていた。
たしかに、家のバジルには一切虫がつきません。防虫剤としてむかしは使われたバジルですが、人間は平気で食べてしまいます。
トマトを切ってみじん切りのバジルをのせ、オリーブオイルをかけただけ。他の料理に塩分がある場合は、特にハーブ塩などをかけずにそのまま箸休めとしていただきます。
いつだったか、さまあ〜ずの三村さんが「豆腐には醤油だけ、ねぎや鰹節なんかはなくてもいい」という趣旨のことを言っていたのを聞いたことがあります。トマトもバジルとオリーブオイルだけくらいがちょうどいいように思ってきたあたり、年をとってシンプルなものがおいしく感じるようになったのかもしれません。シンプルだから安心するというか、複雑さにおいしさよりも不安を感じているのかも。
琥泉(こせん)純米無濾過生酒原酒 氷温貯蔵
生酒が好きなんです。あの口当たりの甘さ、果物のような香り、芳醇な白ワインのようなとろみ。人によっては「女性が好きそうな味」なんて口さがないことを言うかもしれませんが、呑んでいてとにかくうれしい。
しかし、生酒は本来冬のもの。最近は技術革新や冷蔵設備がいいのか、春先になっても生酒が酒屋に並ぶこともあります。とはいえもう季節は真夏。もう生酒なんて無理よね……、とぼとぼと酒屋に向かうとまだありました! しかも2500円程度と妙に安い。怪しいけれども生酒は生酒だ、だってそう書いてあるし。その銘柄は、兵庫県は日本酒で有名な灘区の泉酒造が醸す「琥泉(こせん)純米無濾過生酒原酒」。瓶の上には「氷温貯蔵」と書かれています。ん、これはいったい……。
冬に絞った生酒を0度以下で貯蔵しておき、夏に出すというお酒らしいです。そのため、絞っていきなり瓶に詰めるフレッシュさからは少し遠くなる、のかな? ともあれきっちり冷やしていただきます。味は十分に生酒ときいて期待できる若々しさで、巨峰のような甘みとほんのり渋みが混じっていて、炭酸が舌ではじけるのもうれしい。これから少しずつ呑んでいくと炭酸が抜けていって、本来の味が出てきます。それも楽しみ。