uporeke's diary

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フリオ・コルタサル「終わりなき旅」@セルバンテス文化センター

ずっと気になっていた「フリオ・コルタサル「終わりなき旅」」に行ってきました。場所は奇しくも今月なぜか靖国神社に行ったときと同じ市ヶ谷。かなり道に迷ってたどり着いたセルバンテス文化センターは、純粋にスペイン語の語学教育を行っているところで、1階の書店にも日本語の本は教材以外まったくありません。日本語の本は置いても売れないのかしら。

会場の2階には受付に誰もおらず、つい写真まで撮ってしまいました。10分もあれば全て見られてしまうくらいの広さの会場は、赤と黒に塗り分けられており、コルタサルの言葉と写真が展示されています。旅がテーマとあって、アルゼンチン→パリ→スペイン→イタリア→インド→ニカラグア→アルゼンチンと移動した彼の軌跡をたどることができます。

子供の頃はぷっくりして目がぱっちりで本当にかわいい。それが小学校教員時代になると途端に眉毛もヒゲもごっそり生えてきておっさんとしか形容できなくなってしまい、同一人物とは思えないくらいの変貌。その後パリ(1952〜1958頃)に移住すると、つきあっているアウロラ・ベルナンデスと一緒の写真が多い。ふざけている写真でも目は笑っておらず、まじめそう。インドに行ってもそう。ここでは現地の古い天文台を何枚も撮影しており、白い石を切り出して作られた幾何学的な造形が気に入ったことがうかがえる。

いっしょに写っている作家も豪華で、イタロ・カルヴィーノとはピサの斜塔で、バルガス・リョサとはギリシアで、オクタビオ・パスとはインドで、レサマ・リマとはニカラグアで撮影されている。時には家族といっしょに、時には男同士で。メキシコでフェンテスと写っている時だけ、唯一笑っている。実際もこんなに笑わない男だったのだろうか、またはカメラの前では緊張して笑顔が作れなかったのだろうか。

「ぼくにできることと言えば見ることだけだが、見るというのは確かな保証もないのに対象に身を投げ出すことだから、そこに嘘がふくまれることは言うまでもない――『悪魔の涎』」