uporeke's diary

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Steve Reich「Tehillim」

Tehillim

Tehillim

青地に金文字のシンプルなジャケット。そこから流れてくるのは大地の響きや海の風を感じさせるようなポリフォニックなサウンド。女声の輪唱はヘブライ語で、背後に旋律が繰り返される。ライナーによると室内楽バージョンだそうで、以下の歌手・楽器による演奏だそう。

タンブリンというのはタンバリンのことで、周りに小さなシンバルがついていないもののことを指す。メロディは背後にとどまっていて、声と打楽器が前面に出て民族音楽ぽさが強い。知らずに聴いたら中近東の民族音楽と言われて全く疑わないだろう。

ヘブライ語なんて聞いたことはおろか見たことすらないので、時折はさまれる「ハレルヤ」くらいしか聞き取れないが、旧約聖書を元にしたテキストで、「詩篇19:2-5」「34:13ー15」「18:26−27」「150:4−6」が用いられているとライナーに記されている。

詩篇19:2-5」
2そして、昼となく夜となく、神様について語り続けます。
34大空は、音もことばもなく、静まり返っているの に、その意味するところは全世界に知られます。 太陽は神様の定めた空間を回ります。
5結婚式の花婿のように晴れ晴れと、競技を待ちわびる選手のようにうれしげに、大空を闊歩します。

「34:13ー15」
13それなら、自分のことばに注意をはらいなさい。 どんなことがあっても、うそをつかないことです。
14罪だと思うものからは、いっさい手を引き、善行を積むことに身を入れなさい。 だれとでも平和に暮らそうと考え、そのために全力を尽くしなさい。
15神様は正しい生活を送る者をじっと見守り、その人の願い出ることを聞き届けてくださいます。

「18:26−27」
26心のきよい者には祝福を、主の道からそれる者には苦痛をお与えになります。
27謙そんな者をお救いになりますが、高慢で横柄な者は有罪に定めます。

「150:4−6」
4タンバリンを打ち、元気のいい聖歌をうたいましょう。 弦楽器と笛でほめたたえましょう。
5大音響を出すシンバルを打ち鳴らして、ほめたたえましょう。
6生きているものはみな、賛美の声をあげなさい。 さあ、あなたも神様をほめたたえなさい。ハレルヤ。

(引用はInternational Bible society(PDF形式)より)

150の浮かれっぷりが気に入った。

ライヒはよく「ミニマル・ミュージック」とカテゴライズされますが、似た旋律が続くけれども初めて聴くわたしでも本作がミニマル・ミュージックとは思われない。現代音楽という漠然としたくくりになってしまうが、旋律の不可解さに我慢が必要なわけではなく、むしろ心地よい。いわゆるクラシックの声楽もわたしには窮屈に思われる時があるのですが、伸びやかに広がっていく声の透明感はただの音楽として存在しています。ジャンルを超えて万人に勧めたい一枚。