uporeke's diary

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夏に読んだ本をとりあえずまとめておく

今は英語に集中するので、とりあえず読んだ本のアウトプットは簡単に。まじめに書くと1冊1時間かかるからえらいこっちゃ。

ロドリゴ・レイローサ『その時は殺され……』(現代企画室)

グアテマラ出身でブーム後のラテンアメリカ文学をしょって立つ逸材。軽さ、奇妙なシンクロニシティがあるものの、従来の幻想文学の枠に捕らわれない地元ぽさも出ている。ヨーロッパやアメリカへの憧れの強さがそれほどない。あっけなく死んでしまう儚さがむしろ潔い。

その時は殺され…

その時は殺され…

M・コーニイ『ハローサマー・グッドバイ』(河出文庫

サンリオ不朽の名作が改訳されて21世紀に登場。7年前に読んだ記憶よりも恋愛成分高めで、ロリンなどの異星物があまり出てこない印象。子供の頃に体験した秘密基地ごっことかそういう懐かしさと、その頃抱いていた根拠のない自信、見果てぬ不安が詰まっていてけちのつけようがない。傑作也。

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(NHK出版)

今秋映画化されるための再刊、にしては出るのがちょっと早いように思う。しかし、そんな事情は関係なしにパニックものとして実に素晴らしく、すべてが白い闇に包まれた人々の苦闘をリアルに、だけど知が勝るように描いていて、違和感なく読める。これも傑作。これだけ読みやすいんだから文庫でも出して欲しいものです。

白の闇 新装版

白の闇 新装版

ウィリアム・トレヴァー『密会』(新潮社)

トレヴァーを発見できたのは今年最大の収穫。本書は『聖母の贈り物』よりはやや人情ものに傾いているものの、貧しい人たちが犯してしまう悲しい過ちをきれいに磨きだしている。手に取った者は光り輝く大きな宝石をいろいろな方向から眺めるしかないように、それぞれのエピソードに煌めく光跡をただ眺めるしかない。

密会 (新潮クレスト・ブックス)

密会 (新潮クレスト・ブックス)