uporeke's diary

苔を見ています http://www.uporeke.com/book/

秋山瑞人『ミナミノミナミノ』(電撃文庫)

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

秋山瑞人の小説を読むときは現実逃避したいとき。冷静になれば小説の世界の限界を認めてしまうのだけど、読んでいる間はその範囲を感じられないほど、どっぷり浸れる。登場人物に同調して同じ感情を味わい、現実の自分が抱えている不安や悩みをとりあえず忘れていられるだけの筆力があり、もっとたくさん書いてくれたらいいな、と思う作家。

今回の主人公はお茶目な姉にだまされて孤島に送り込まれ、秘密めいた島民に暖かく迎えられるも、不思議な体験に巻き込まれる。あとがきで著者自身も言っているように『イリヤの空、UFOの夏』テイストをキープしているそうで、意外性もないしあらすじもなんとなく読めそうだが、それでも読んでいる間の楽しさは変わらない。美少女と接近してどきどきしたり、危機に直面して逃げ出して自己嫌悪におそわれたり、いざというときはできもしないことを請け合ってえらい目にあったり。いいかっこしたい男子は必読であります。でも『イリヤ〜』のアニメは終わってしまったので、たぶん次作は出ないんでしょうね。