uporeke's diary

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ハルヒとボルヘス

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

今更ながら涼宮ハルヒを読んでおります。5巻目にあたる「暴走」まで読んだ。SFぽさが多い学園ラブコメなところが、ラテンアメリカの貧しい現実に直面して打ち破れてばかりだったわたしのこころにファンタオレンジのように甘く染み渡ります。たまにはこういうのもいい。

特にすばらしいと思うのが、時間の動きがくぐもっているところ。小説内では夏から冬へ時間が動いているようだが、時間を移動する人物が出てくることでより短い時間の移り変わり以上の厚みが出ている(未来から来た人物が高校生の自分に触れたときには「爆発する!」とおののいたが、愛らしいシーンの一こまで済んだところはちょっと驚いた)。時間ものSFでわたしが真っ先に思い出す傑作の一つ、「ここがウィネトカなら、君はジュディ」を学園ラブコメにしたような感じ。なので、ハルヒが好きな人はもう絶版になってしまった新潮文庫の『タイムトラベラー』も読むべきだと思います。

さて、ちまちま読んでいるボルヘスの中に、ちくま学芸文庫から出ている『永遠の歴史』という本があります。

永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)

永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)

これはボルヘスによる哲学的なエッセイ集で、そういうのにとんと疎いわたしは1編ずつ読んではきちんと理解できない自分の脳みそにうんざりしながら本を置く、というのを繰り返してきたつきあいの長い一冊。購入してから数年たつのに、まだ半分くらいしか読み終えていないのですが、久しぶりに手にとって開いたページのタイトルは、「円環的時間」。その冒頭は次のように始まる。

わたしの思いはつねに永劫回帰へと立ち返る。

そこからマルクス・アウレリウスショーペンハウアーを援用し、万物は流転し、過去や未来には概念でしかなく、全ては現在にしかないと説かれてきた歴史を語る。だとしたら時間を移動して現在の一部として過去を生き、過去の自分や友人に干渉することも現在の一部でしかなく、その結果も現在の自分の一部に過ぎないのか。その因果応報の込み入っているけれどもうまく解きほぐすことができるさじ加減が、ハルヒシリーズについては案配よく描かれているように思えたのです。続きも楽しみ。