uporeke's diary

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涼宮ハルヒの消失

涼宮ハルヒシリーズは一通り読んでいるし、「消失」はその中でも一番好きかもしれない。そもそもめがねでおとなしい女子が読書家というだけで、いわゆる文系男子はいちころではなかろうか。映像化は非常に小説に忠実なつくりで、ある意味「完コピ」と言えるほど。アニメ化は完コピを目指すものかどうか、他の作品には疎いのでよく分からないけれども、小説とは異なる何かを必要以上に求めすぎず安心して作品に心をゆだねられました。

本当に小説に忠実だったので、新しい事実への驚きはなかった。しかし、丁寧に作られた映像は知っているはずの物語からさらに興奮を与えてくれる。それは巻き込まれ続けたキョンの視点で後戻りできないことを実感させられるからだ。これは長々と続いてきた1期と(特に)2期のアニメがあるからこその効果だ。そもそも同じ話を演出を変えながら8回も放映するという大胆な実験(わたしにとってそれは驚異的なことであり大成功だったが世間の評判はよろしくないようだ)を経て、まるで野菜に塩が浸透して漬け物になるように、関係性が発酵して新たなうまみが生まれている。これは単に原作が長い、アニメの時期が長いだけではできない、特殊な体験をキャラクターと観客が共有したからこそ、と言える。

その中でも「観察者」としての長門、観客にとっての解説を担当する別の意味での「観察者」キョン。二人の観察者が行動者になる物語として、さしずめドン・キホーテが騎士道小説を読み込みすぎて自ら冒険に踏み出す。物語から現実へ一線を越えたことが、長門にとっての時空改変にあたるのかもしれない。そうするとサンチョが伴ってくれなかったドン・キホーテはどうなるのか、あまりにも寂しくて考えたくないが、エンターキーを押した世界はそういうものだ。

とにかくいろいろ素晴らしく、アニメはこれと「けいおん!」しか見てませんが、是非もう一度みたいと思わせる作りでした。