美の20世紀(14)『カーロ』(二玄社)
- 作者: ゲリースーター,Gerry Souter,山梨俊夫,小野寺玲子
- 出版社/メーカー: 二玄社
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 大型本
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世田谷美術館で開催されている「メキシコ20世紀絵画展」の予習として図書館で借りてきた。ミドルクラス以上の家庭に育つも、18歳の時バス事故によって身体に穴が空くほどの重傷を経て、それまで興味だけだった絵画を公のものとして描きたいという欲求が強まって、当時メキシコでも有数の画家だったディエゴ・リベラと結婚。その後はけがの後遺症や流産に加えて、お互いの不倫でどろどろの関係になるが、離婚と再婚を経て死ぬまで二人は連れ添うことになる。
けがのことはおいても、カーロの絵からは尋常でない生命力や執念がにじみ出ているのが写真でも伝わってくる。自画像のつながった眉毛にまず目がひかれる他、極彩色のパッションフルーツなどもはや静物ではない静物画であり、身体から流れ出す見えないおびただしい血と叫びに満ちた絵ばかりだ。知れば知るほど彼女が絵に込めた思いが重くのしかかり、美しく力強いのだけど受け止めるこちらの精神的な腕力が求められる。好きとは軽々しく言えない絵だけど、ぜひ本物を間近に見られるこの機会に世田谷美術館まで足を伸ばすべきと思います。