uporeke's diary

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チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』(早川書房)

ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)

ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)

分厚いけど、読み終えたときには相応の喜びを得られる本。スチームパンクに反応する人はもちろん、冒険小説好きな人やファンタジー好きにもアピールできる。TRPGの世界観を小説にしたような懐の深さがあり、世界の深読みができるところがおもしろい。ゆっくりじっくりこのバス=ラグシリーズに付き合えたら幸せだろうな。

物語の柱としては、

  • 刑罰で羽をもがれたガルーダ族のヤガレクが再び空を飛べるようになるために科学者のアイザックに依頼する
  • アイザックと虫人間のリンとのロマンス
  • リンは分泌する液で彫刻を作るアーティスト。闇社会の大物から彫像を作るように依頼される
  • アイザックが戯れに育てていた芋虫が、実は人類を捕食する蛾の幼虫だった

これらをうまく混ぜ合わせて息もつかせない展開に仕上がっている。特に最後の蛾「フレイク・モス」が人のみならず夢を見る者を次々に捕食していく様はグロテスクで恐ろしい。ハリウッドが映画化してもおかしくない。エンターテインメント性を持ち合わせながら、人々の苦悩や種族間の対立などもあり、非常にリアルな設定となっている。久しぶりに長編を堪能したし、多くの人に読まれるべき傑作です。