uporeke's diary

苔を見ています http://www.uporeke.com/book/

This is it


公開された当初は正直もうマイケルを見なくていいと思っていた。40過ぎてもターンの速度は若い者に負けてなかったし、後期の楽曲も好きなので、マイケルの凄さは知ってるつもりだった。でも、この映像ではリハーサルや練習もする人としてのマイケル・ジャクソンの凄さを体感できる。

映像は最初にダンサーたちのオーディションから入る。目に涙をためながら「マイケルと同じステージに立てて嬉しい」とコメントする若者たち。選ばれた子は若くて力が入りすぎていたり、HIPHOPから抜け出せてなかったりするが、いざマイケルとのリハーサルになると我を消してバックダンサーとして若々しく力強い動きを見せていた。

マイケルの動きは相変わらずすごい。きちんとしたムーンウォークや「Smooth Criminal」のかかとひっかけはなかったものの、Beat itあたりは若い頃と同じレベルの動きを保っている。見た人は誰しも思うだろうが、50歳で本気出したマイケルを見たかった。

また指導者としてのマイケルもすごい。舞台監督もいるが、マイケルが大事なポイントは指示を出していく。余韻の残し方やアドリブなど、演奏する人が自信を持ってできるように伝えていくところが素晴らしいと思った。マイケルの言うことだから素直に聞くという面はあるにせよ、そこまで人を惹きつけるマイケルの支持は決して明確じゃないけれども、グルーヴを大切にしたいという彼の気持ちが分かれば自然と納得のいく内容。

しかし、声が出てない。前から声については厳しいところもあったけど、練習でも「ウォーミングアップだから声は出したくないんだ」とフルコーラス歌うことを拒否。未発表曲のThis is itもデモ段階とはいえあからさまに声が出ていないし、高低を使わない曲になっている。

人が死ぬときは事故でも病気でもその人なりの寿命だったのだと信じているわたしには、マイケルが練習を乗り切るための鎮痛剤を過剰に摂取して亡くなったことも寿命の一つのあり方だと思ってます。しかし、この映像が本番につながらなかったことは哀しいことだし、希望の一つの形が実現しなかったのだと思うとじわじわと哀悼の感がせり上がってきます。

わたしにとって本作一番の見所は「I'll be there」。「ここにいるよ」というマイケルの声がすぐ近くから聞こえてきそうな、今までで一番優しい「I'll be there」でした。